
8月1、2日に行なわれる「NHKバレエの饗宴」で上演される平山素子さんの新作振付作品「Scarab —スカラベ—」のリハーサルを見学させていただきました。
魅力的なダンサーばかりですので、
私が勝手に調べた非公式簡略プロフィールを書きます。
〈チラシ掲載順〉
鳴海玲那(Kidd Pivot)
現在はクリスタル・パイト率いるカナダのダンスカンパニー所属。過去にはスエーデン王立バレエ団時代にマッツ・エック振り付けのジュリエットとロミオで主演やネザーランドダンスシアター(NTD1)時代には世界で活躍されている振付家の作品に多数参加している。
亀井彩加
カナダでダンスを学び、フランス・カンヌジュンヌバレエに所属。その後Noizm Company Niigaraで6年間活動後ドイツへ渡り、オズナブリュック市立劇場に8年間在籍。多くの国際的振付家の作品に参加し、自作の創作・発表も行なう。2024年よりフリーランス。
中川賢
日本大学芸術学部演劇学科用部コース卒業。2009年よりNoismのメンバーとなり、主要なパートを踊る。対談後は新国立バレエ団で「春の祭典」にゲスト出演。舞台「千と千尋の神隠し」ではカオナシ役など、各種舞台芸術で活躍。
中村駿嵩(ベルン・バレエ)
カンヌ(フランス)のESDC Rosella Hightowewに留学後、ドイツのプフォルツハイム市立劇場、ハーゲン市立劇場を経てスイスにあるベルン・バレエに所属し、シャロン・エイアル、マルコ・ゲッケ、シディ・シェルカウイなどの振付作品に参加している。
吉留諒(東京シティ・バレエ団 プリンシパル)
2016年に東京シティ・バレエ団に入団し、22年8月にプリンシパルに就任。今回の参加者の中では唯一クラシックバレエのダンスールノーブルなダンサー。
平山素子(筑波大学体育系准教授)
コンテンポラリーダンサーとして自身が踊る傍ら、国内外の一流ダンサーへの振付を行なう。振付の対象はダンサーのみならずフィギュアスケーターやアーティスティックスイミングなど多岐にわたる。また、研究や実験としてのダンスなどにも積極的に参加している。
このメンバーが作り上げる作品というだけで面白そうなのが伝わってくると思いませんか?

リハ直前の風景です。私の顔が緊張していますね。
【リハレポート】
私が見学したリハーサルは吉留諒さんを除く5人が参加していました。
全員集まる時間を作るだけでも大変なのでしょうね。
さていよいよリハーサル風景のレポートです。
まずはダンサーそれぞれが自分のペースで自分流のやり方でウォーミングアップをしていきます。
前日の筑波大学ダンス部へ平山素子さんが伝えていた「様々なダンサーを見てきたけど、誰1人としてウォーミングアップのやり方は同じではない」という言葉そのものの風景が目の前に広がっていました。
そこから衣装のサイズチェックなどの時間を経てクリエーションの時間に入ります。
まだ振付を意図的に固定していない状態でのアイデア出しのような時間を長く取っていました。
平山素子さんが抽象的なワードをいくつか提示して、出演ダンサー達がインプロビゼーションで踊る。
これを何度か繰り返しながらその都度ダンサー達は全然違う動きを提示していきます。
さらには「踊らないで」「組まないで」「床に寝ないで」と制約をどんどん重ねていくのですが、まるでそんな制約があるとは思えないほど自由な動きをしているように見えます。
ここで振付家とダンサーは、踊りでの対話のほかに「私はこう思う」「ここではこのように踊ってみた」「
それだと時間が余る」など直接言葉でのやり取りも積極的に行なっていたのが印象的でした。
今回のリハーサルの参加者の半数以上が英語でリハーサルを行っている人たちであり、文化も国籍も違う人たちと仕事をしていることで "不必要な遠慮" をせずにクリエーションを振付家と共に作り上げていくように感じました。
【使用曲はラヴェル】
今回の使用曲はラヴェルのピアノ協奏曲 ト長調なのですが、とても複雑な曲です。
この曲だけ聞くと「どうやって踊るの?」と思うと思います。
途中で何拍子なのか分からない部分や曲のピッチが変化する部分などがあります。
3つの楽章から成り立っており、それぞれ違う雰囲気と共通点を持った楽曲です。
【タイトルはスカラベ】
古代エジプト人は聖なる甲虫としていた虫で、和名はフンコロガシです。
「再生」「復活」「創造」のシンボルとされており、他にも「太陽神の象徴」「護符としての存在」として扱われたり、現代では「自己変容」「内なる力」などの意味を持つこともあるようです。
どの解釈を作品に取り込んでいるのかなどは尋ねませんでしたので当日完成された作品を見て解釈しようと思います。
【ダンサーの能力】
それにしてもダンサーそれぞれの能力が圧倒的に高くて圧巻でした。
体が効くとかそういう次元ではなく、抽象的なキーワードへの解釈の速さや深さ、そしてひとたび振付を組み立てた時の覚えの速さと修正した時の対応力など、全てにおいて能力が高く、振付家としては楽しいだろうなと思いました。そして安心して任せられるでしょうし信頼できる人たちだと思います。
だからこそあえて振付を全て完成させずに色々な実験を沢山行なうことが出来るのでしょうね。
ある程度振りが決まっている部分の一部を見せていただきましたが、驚きの連続でした。
その音でその動きをして、その動きでその音を取っているのか。というのがすごい速さの中で行なわれ、さらにはユーモアのある部分も含まれていて難しいことを考えないでも楽しめる作品であり、難しい部分を見れば見るほど楽しめる作品でもあります。
NHKバレエの饗宴はまだチケットが取れますので、他の出演者も豪華ですからぜひ足を運んでみてください。
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